はじめに

qmailを利用してメールサーバを構築する方法について説明する。

「sendmail」の停止

まずはじめに、既に動作しているMTA「sendmail」を停止する。
「sendmail」の停止は、「/etc/rc.conf」に以下の記述を追記し、システムを再起動させる。

「rc.conf」の編集
sendmail_enable="NONE"

「qmail」関連のパッケージのインストール

次に、「qmail」を動作させるために必要ないくつかのソフトウェアをインストールする。

「qmail」関連のパッケージのインストール
$ pkg install netqmail
$ pkg install ucspi-tcp
$ pkg install checkpassword

「netqmail」はqmail本体、「ucspi-tcp」はqmailを動作させるために利用する「tcpserver」が含まれるパッケージ、「checkpassword」は./Maildirからメールを取得する際の認証に使うパッケージとなる。

qmailの設定

次に、「qmail」を動作させるための設定ファイルを作成する。

「qmail」の各種設定ファイルは「/var/qmail/control」配下に格納する。

以下の例では、このメールサーバに割り当てられたサーバ名を「mail.kishiro.com」、MXレコードで指定したドメイン名を「kishiro.com」として設定している。

/var/qmail/control/defaultdomain

toヘッダなどにドメイン名が省略された場合に補完されるドメイン名を記載しておく設定ファイル。

「defaultdomain」
kishiro.com

/var/qmail/control/locals

メールを受信するホスト名・ドメイン名を記載しておく設定ファイル。

「locals」
localhost
localhost.kishiro.com
mail.kishiro.com
kishiro.com

上記のように「localhost」→「localhostから始まるFQDN」→「サーバのFQDN」→「MXレコードに記載されたドメイン名」の順番に記述する。

/var/qmail/control/rcpthosts

「locals」と同じくメールを受信するホスト名・ドメイン名を記載しておく設定ファイル。

「rcpthosts」
localhost
kishiro.com
.kishiro.com

上記のように「localhost」→「MXレコードに記載されたドメイン名」→「"." + MXレコードに記載されたドメイン名」の順番に記述する。
「rcpthosts」を正しく配置しないと、qmailは他のドメイン宛のメールを中継してしまうので、ファイル名や記述内容には十分注意のこと。

/var/qmail/control/me

自サーバのFQDNを記載しておく設定ファイル。

「me」
mail.kishiro.com

/var/qmail/control/plusdomain

toヘッダなどにドメイン名が「+」で終わっている場合に補完されるドメイン名を記載しておく設定ファイル。

「plusdomain」
kishiro.com

起動スクリプトの編集

次に、「qmail」の起動スクリプトを編集する。

まず最初に、「/usr/local/etc/rc.d/」に格納されている起動スクリプト「qmail.sh」があれば、これを削除する。

このスクリプトは、「qmail」を直接起動させるためのもので、「/var/qmail/rc」へのシンボリックリンクになっている。 今回「qmail」は「tcpserver」経由で起動させるので、このスクリプトを「unlink」で削除します。

起動スクリプト「qmail.sh」の削除
$ unlink /usr/local/etc/rc.d/qmail.sh

次に、「qmail」本体の起動スクリプト「rc」を作成、編集する。

起動スクリプト「rc」の作成
$ cp /var/qmail/boot/home /var/qmail/rc

保守性の高いMaildir形式でメール管理を行うよう、ファイル内の下記箇所を以下のように書き換える。

「/var/qmail/rc」の編集(編集前)
qmail-start ./Mailbox splogger qmail

「/var/qmail/rc」の編集(編集後)
qmail-start ./Maildir/ splogger qmail

「./Maildir」ではなく、ディレクトリを明示的に示す「/」が末尾に付く「./Maildir/」になっている点に注意のこと。
これがないと、メール配送時に「/var/log/message」に「deferral: Unable_to_open_./Maildir:_is_a_directory._(#4.2.1)」のようなエラーが表示され、メールがユーザのMaildirに正しく格納されない。

「tcpserver」経由での起動の設定

続いて、qmailを起動させるための「tcpserver」の設定をする。
まず、設定ファイルの元となるテキストファイル「/etc/tcp.smtp」を以下の内容で作成する。

「/etc/tcp.smtp」の作成
192.168.0.:allow,RELAYCLIENT=""
127.:allow,RELAYCLIENT=""

「192.168.0.:allow,RELAYCLIENT=""」は、192.168.0.0/24からのリレーをアクセスを許容する設定となる。
ご利用になる環境にあわせ、適宜変更して利用のこと。

続いて、このテキストファイルを元に、tcpserverのアクセス制御用DBファイル(tcp.smtp.cdb)を作成する。

「tcpserver」のアクセス制限用DB(tcp.smtp.cdb)の作成
$ /usr/local/bin/tcprules /etc/tcp.smtp.cdb /etc/tcp.smtp.tmp < /etc/tcp.smtp

最後に、tcpserver経由でqmailを起動させるためのスクリプト「qmail.sh」を「/usr/local/etc/rc.d/」上に作成し、実行属性を付与する。

起動スクリプト「qmail.sh」の作成
#!/bin/sh
#
# qmail: /var/qmail
PATH=/var/qmail/bin:/usr/local/bin:/bin:/usr/bin

[ -f /var/qmail/rc ] || exit 0

case "$1" in
start)
        echo "Starting qmail."

        if [ -e /var/lock/qmail ]
        then
                echo "qmail already running."
                exit 1
        fi

        sh -cf '/var/qmail/rc start &'
        tcpserver -4 -HR -v -u [qmaildのUserID] -g [qmaildのGroupID]  -x [tcp.smtp.cdbへのパス] \
        0 smtp /var/qmail/bin/qmail-smtpd 2>&1 | /var/qmail/bin/splogger \
        smtpd 3 &
        tcpserver -4 -HR -v 0 pop3 /var/qmail/bin/qmail-popup [メールサーバ名] \

        checkpassword \
        /var/qmail/bin/qmail-pop3d Maildir 2>&1 \
        | /var/qmail/bin/splogger pop3d 3 &
        touch /var/lock/qmail
        ;;
stop)
        echo "Stopping qmail."

        if [ ! -e /var/lock/qmail ]
        then
                echo "qmail not running."
                exit 1
        fi

        ps -a | grep -e "tcpserver" -e "qmail-send" | grep -v grep | awk '{print $1}' | while read pid
        do
                if [ ! -z "${pid}" ] ;  then
                        kill ${pid} 1> /dev/null 2>&1
                fi

        done

        rm -f /var/lock/qmail
        ;;
*)
        echo "Usage: tcpserver.sh {start|stop}"
        exit 1
esac

exit 0

上記の例では、pop3でメールを取得する際に、ユーザのパスワードで認証を行う「checkpassword」もあわせて起動させている。

上記の[qmaildのUserID]、[qmaildのGroupID]、[tcp.smtp.cdbへのパス]、[メールサーバ名] については、各自の環境にあわせ適宜設定のこと。

尚、qmaildのUserIDおよびGroupIDについては、下記の手順で調べることができる。

「qmaild」のUserID/GroupIDの調べ方
$ id qmaild

また、上記のシェルスクリプトでは「 /var/lock/qmail」をロックファイルとして利用するので、「/var/lock」のフォルダがなければ、mkdirで予め格納先ディレクトリを作成しておくこと。

メールサーバについては、「mail.kishiro.com」のように、ドメイン名を含んだ形で記述のこと。

最後に、メールを受信したいユーザは、個別に下記のようにしてMaildirを作成しておく。

「Maildir」の作成
$ /var/qmail/bin/maildirmake ~/Maildir

尚、rootやsys等のシステムユーザについては、各々のホームディレクトリ内のMaildirにメールは配送されない。
これらの特殊なユーザに対するメールを受けたい場合は、後述する「メールアドレスのエイリアス」を参考にして、別のユーザ宛にメールを転送し、そのユーザでメールを受け取る必要がある。

以上で設定は完了。
「/usr/local/etc/rc.d/qmail.sh stop」及び「/usr/local/etc/rc.d/qmail.sh start」を実行するか、システムを再起動させてqmailを起動させる。

tcpserverがうまく起動しない場合のトラブルシューティング

上記の通り設定しシステムを再起動させても、tcpserverが起動しない場合がある。
この場合は、tcpserverの起動スクリプトである「/usr/local/etc/rc.d/tcpserver.sh」の中身を確認し、どこでエラーが出ているのかを確認すること。
(エラーを表示させるには、スクリプト内の「2>&1」の表記を削除する必要がある。)

以前、FreeBSD 8.4-RELEASEでtcpserverが起動できない現象に見舞われたが、その時はkernelのIPv6を無効にしていたことが原因だった。
この場合、tcpserverの起動パラメータに「-4」を付与しIPv4のTCP Socketのみを作成させることにより、問題を回避できた。(上記も例では「-4」を指定済み。)

メールアドレスのエイリアス

上記までの設定で既にメールが利用できるようになっているが、このままの設定では、rootやsys等のシステムユーザ、Maildirを持たないユーザや、そもそも存在しないユーザに対してのメールは受信できない。

これを回避するために、エイリアスを利用して特定ユーザ宛のメールを別のユーザに転送するように設定する。

qmailでのエイリアスは、「/var/qmail/alias」下にあるファイルを編集する。
(sendmailやpostfixと違い、「/etc/mail/aliases」および「/etc/mail/aliases.db」は見に行かない点に注意のこと。)

「/var/qmail/alias」には、「.qmail-*」という名前のファイルがいくつか格納されている。 たとえば、「.qmail-root」はroot宛に送られてきたメールの転送先を指定するファイルで、この中に以下のように記述すると、root宛のメールが「hoge@kishiro.com」に転送される。

「.qmail-root」の編集(「hoge@kishiro.com」の転送)
&hoge@kishiro.com

また、以下のように記述することにより、メールを転送することなく、破棄することも可能です。

「.qmail-root」の編集(メールの破棄)
#

また、「.qmail-default」というファイルを作成し設定することにより、Maildirを持たないユーザや、そもそも存在しないユーザに対してのメールを、別のユーザに一括転送することができる。(記法は「.qmail-root」と同じ。)

変更履歴

2017/04/25

・pkgを利用したインストール方法に書き直し。
・rcpthostsに関する注意事項を追記。
・tcpserverのシェルスクリプトをFreeBSD 10.3-RELEASEで動作確認したものに差し替え。

2014/05/14

・「tcpserverがうまく起動しない場合のトラブルシューティング」を追記。


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